モンゾと音程空間

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このページではモンゾの正式な数学的定義を与え、また音程空間との関連も示す。例の付いたより簡単な解説は、モンゾを参照。

定義

p-リミットの有理数 q は定義より p 以下の素数の積に分解でき、以下のように表せる。

[math]\displaystyle q = 2^{e_2} \, 3^{e_3} \, 5^{e_5} \dotsm p^{e_p}[/math]

ただし指数は整数である。

これはしばしばケットベクトル(詳細はWikipedia - ブラ-ケット記法を参照のこと)を模した表記を用いて、

[math]\displaystyle |e_2 \, e_3 \, e_5 \ldots e_p \rangle[/math]

のように書かれる。この時、このベクトルをモンゾ(英: monzo)と呼ぶ。この名前は、ジョセフ・モンゾ (en) の情熱的な支援にちなんでいる。

モンゾのTenney高さ (en) は以下のように与えられる。

[math]\displaystyle \| |e_2 \, e_3 \ldots e_p \rangle \| = |e_2| + |e_3| \log_2 3 + \dotsb + |e_p| \log_2 p[/math]

これはベクトル空間のノルムである。よって写像 [math]M:monzos \rightarrow I [/math] によって p-リミットモンゾを次元 [math]n = \pi(p)[/math] のノルム線型空間 [math]I[/math] に埋め込むことができる。ただし [math]\pi(x)[/math]素数計数関数。この埋め込みの下、モンゾは格子を定義する。この格子は有限次元実ノルム線型空間 [math]I[/math] を張る [math]I[/math] の離散部分群である。

素数 k に対応する座標 ek に log2 k を乗じて座標を変換すると、このノルムは通常の L1-ノルムとなる(詳細はWikipedia - Lp 空間#有限次元における p-ノルムを参照)。このベクトル空間はTenney音程空間であり、この通常の L1-ノルムによって変換された座標がTenney空間の標準基底を構成する。 ここで、モンゾはある正の実数(モンゾの場合は常に有理数)と一対一で対応するが、Tenney空間のベクトルはそうではないことに注意。例えば、[1 0 は周波数比 2 を表すが、[0 log3 2 も同様に 2 を表す。

ユークリッドノルムは数学的な利点を持つため、よく L1-ノルムの代わりに音程空間のベクトルに対して適用される。この場合、Tenney音程空間の代わりにTenney-ユークリッド音程空間 (en) が得られる。明示的にモンゾ [e2 e3ep をとったとき、そのTenney-ユークリッドノルム(またはTEノルム)は以下のようになる。

[math]\displaystyle \sqrt{e_2^2 + (e_3 \log_2 3)^2 + \dotsb + (e_p \log_2 p)^2}[/math]

そして、座標が重み付けられた音程空間の座標ならば、そのTEノルムは標準ユークリッドノルム、または L2-ノルムとなる。

別の定義

q を有理数とすると、以下に示す定義によって q をモンゾ形式に書き換えることができる。

[math]\displaystyle q = |v_2 (q) \, v_3 (q) \, v_5 (q) \ldots v_p (q) \rangle[/math]

このモンゾのTenney高さは以下のように与えられる。

[math]\displaystyle \| |v_2 (q) \, v_3 (q) \ldots v_p (q) \rangle \| = |v_2 (q)| + |v_3 (q)| \log_2 3 + \dotsb + |v_p (q)| \log_2 p[/math]

ただし、[math]v_p(q)[/math]qp 進付値である。

5-リミットの音程 16/15 は 24×3-1×5-1 と分解され、モンゾでは [4 -1 -1 となる。重み付き座標の場合、[4 -log2 3 -log2 5 となり、近似値では [4 -1.585 -2.322 となる。

したがってTEノルムは

[math]\displaystyle \sqrt{4^2 + (\log_2 3)^2 + (\log_2 5)^2} ≅ \sqrt{23.903} ≅ 4.889[/math]

となる。

関連項目

脚注